マシュマロと恋の味

　むき出しの腕をさすりながら、服の山から淡いブルーのニットワンピと、オフホワイトのボアブルゾンを引っ張り出した。明日のための選抜メンバーに袖を通して、姿見に映す。うん、いい感じ。

　そのまま目線は頭に移る。

　髪型はどうしようかな。アウターにボリュームがあるから髪はまとめたほうが良さそうだ。アイロンでゆるく巻いて、低めのお団子ヘアはどうだろう。

　ヘアアレンジに予行演習は欠かせないので、洗面所からお母さんのヘアアイロンを借りてきて、部屋のコンセントに刺した。一緒に持ってきたヘアミストで髪を濡らしながら、アイロンが熱くなった頃合いに、姿見の前で丁寧に髪を巻く。かといって、あまり時間をかけ過ぎると音楽室に貼られてる作曲家みたいなくるんくるんになるから、適度に手早く、ゆるふわに。
　ヘアゴムとヘアピンでふんわりまとめて、うん、いい感じ。これを明日の朝、手早く再現しないとな。

　外見が完成し、姿見に映る自分を眺めた。

　これ、明日八谷くんの隣に立つ私。八谷くんの私服姿は見たことがないから見慣れた野球のユニフォーム姿で……は、なんだか水族館にはそぐわないから制服姿を想像して隣に並ぶ。