マシュマロと恋の味

9/14

27人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 袋からマシュマロを二つ指でつまんで取り出す。このふわふわ感がちょっと唇の感触に似てるんじゃないかと思って持ってきたけれど、二つ重ねて見ると八谷くんはこんなに分厚い唇じゃないなと思いつつ、甘い香りがなんだか私の妄想するキスに似ていて心が躍る。  八谷くんの顔を思い浮かべてマシュマロに向かって「あのね、キスしたいな」と告げたあと、目を閉じてそっと唇を当ててみるとふわっとした感触と甘い香りが鼻から頭に通り抜けて天に登りそうになった。いやまあ人間こんなに甘いわけはないとは思うけど妄想としては百点満点だ。一袋百二十円のマシュマロ二粒でこんなにも幸せな気持ちになれるなんて恋ってなんて素晴らしいんだろう!  陶酔しながら恋の甘さに感動していたとき、ベッドに置いていたスマホが鳴った。  受信の通知の「八谷くん」の文字に、浮き足立ってメッセージを開いた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加