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彼は七海と同い年で、真矢より五歳上になる。
そのため鷹司が、多少は暇もある院生だったのは真矢が大学に入学した年だけだった。
しかし就職してからも、休日にときどき会ってくれている。
単なる元教え子の相手など、普通なら面倒だし嫌だろう。本当に優しくていい人なのだ。
真矢はずっと彼が好きだったが、鷹司にとってそういう対象ではないのもわかっていた。
そもそも男なのだから、知られたら絶対「気持ち悪い」と嫌われて、避けられるに決まっている。
片想いで十分だった。
真矢が合格したときも手放しで喜んで、お祝いだと静かなレストランでご馳走してくれた。
大学生になってもたまには会いたい、と無理は承知で頼んだ真矢に笑顔で頷いてくれた。
それ以上を望む気はない。好きな人と一緒に過ごせる時間のあることが嬉しかった。
本心からそれだけでよかったのに……。
──いきなり断ち切られたみたいに、何もかも奪われるんだ。
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