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【3】
《鷹司さん、一日だけ僕にほしい。水族館に行きたいんだ。》
ごく短いメッセージを、昨夜から何度も書いては消して、また考えて。
文面を決めてからも送信ボタンを押すのを躊躇っていた。今朝になってやっと心を決めて、思い切って送ったのだ。
──クリスマスなんて贅沢言わない。その前に、一日でいいから。
十二月に、ずっと外で過ごすのは現実的ではなかった。
水族館なら屋内でも人が多いし、許容範囲だろうか。
あからさまなデートスポットは男二人ではかえって浮くかもしれない。友人同士や子連れでも普通に行くところだから大丈夫か、と迷った末に選んだ場所だった。
もうこれからは、結婚した、……まだしていなくとも決まっている人を誘うなんてできない。
ただの友達みたいなものだとわかってはいても、何もしなくて浮気にならなかったとしても、真矢の想いがある以上それは裏切りだと思う。
けれど知らないふりをして一日だけなら。何があっても必ずこれで最後にするから。
──お願い、許してください。誰だかわからない鷹司さんの恋人。僕が見たこともない彼を、よく知っているだろう人。
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