【4】

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「今日はとっても楽しかった! ありがとう、鷹司さん。──もうこんなことないから安心してよ。ワガママ言ってごめんなさい」  ……ぎりぎりまで悩んだ挙句、謝ってしまった。  最後まで知らぬふりを押し通せなかった。  嘘が上手いのは果たしていいことなのか、などとどうでもいいことを考えて、結局黙っていられなかったのだ。  そもそも向こうから結婚の話を出しているのに、「全然知らなかった」ふりで二人で会いたい、なんていうのがもうおかしい。通じるわけがない。  それなら正直に告げて謝る方が、多少は印象が良い気がしたのだ。せめて鷹司の中では、最低の常識くらいはある普通の子でいたかったから。 「真矢くん、どうしたの? 我儘って、この程度でなんか大袈裟だね。そんなに来たかった? 知ってたら水族館くらいいつでも来られたのに〜」  普段と何ら変わりない、気軽な口調。彼にとっては些細なことなのだろう。
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