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「あ、……あー! これ違う、誤字! 入力ミス、ってか予測変換の罠? 『結婚』じゃなくて『結構』。『ハイスぺ機はやっぱ高くて、でも妥協して後悔したくないからどうしようかな』って話だったんだって!」
メッセージアプリのトークルームを確認していたらしい鷹司が、必死で弁解を始めた。
「けっこん。け、っこう……?」
結婚するから。結構するから、……値段が?
入力ミス。予測変換。どちらもよくあることだ。真矢も何度も経験があった。
「あー、そ、そう、なんだ。結婚、じゃなくて、──えっと」
しどろもどろの真矢に、彼が頬を緩める。怒っていないようでよかった。
安心したのも束の間だった。
「真矢くん。君の中で俺は、定期的に会う子に結婚する相手がいることも話さないような男なのか?」
すっと真面目な表情になって、彼が静かに口を開く。
「ちが、そんなこと思ってない!」
「ああ、いや。そうじゃないよな。俺が何も言わなかったのが悪かったんだ。──怖くて」
慌てる真矢を見た彼が、小さく笑って話し出した。
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