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「あれは──」 「真矢くん」  真矢の声を遮るように名を呼んで、鷹司がじっと目を見つめてきた。  逸らしてはいけない。今は絶対に。そう直感した。 「しかも高校生だった教え子に、とは思っても会いたくて。でも、そんなのは全部、今日で終わりにする。……したい、と思う」  消え入りそうな声で呟く、鷹司。 「ねえ、知ってたよね? 僕、ずっとが好きだった。会えるだけで嬉しかった。──もうそれだけじゃなくなるってこと?」  この恋心が見透かされないようにと戒めていたつもりだった。  ただ実際には、感情の機微に敏い相手なら察するのは容易(たやす)かったと自分でも思う。そして鷹司は、決して鈍感ではない。 「……さっき撮ったやつ、俺にも送って。ずっと欲しかったんだ。君の写真」  これが彼の答えだ。今までずっと、秘めざるを得なかった想いを言葉にすることに慣れていない恋人の。 「もちろん! 今送るね」  間髪入れずに返した真矢の笑顔は、綺麗に映っているだろうか? 少し潤んだ、鷹司のその瞳には。  今日は真矢にとっては大切な日。  片想いが終わって、恋が始まる日。これからいくらでも増えて行く、想い出の中の一つになるのかもしれない。  ──だけどきっといつまでも、僕の『特別』な一日なんだよ。                               ~END~
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