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「先生、名前カッコいいですね! 『鷹司 (つばさ)』って!」  初めての授業の日。真矢は彼のノートの記名を目にして考える前に声が出ていた。  よく知らない、ましてや年上の人と何を話していいかわからなくて咄嗟に飛びついてしまったのだ。 「……これ『(よく)』って読むんだ。『たかつかさ つばさ』じゃ語呂悪すぎない? 言い難いし」 「あ! す、すみません!」  そういえば母にフルネームも聞かされていたはずなのに、全然覚えてもいなかった。 「いや、謝ることじゃないよ。『つばさ』って読むのが普通だしね」 「あの、でもいい名前ですよね。『鷹の翼』ってすごい素敵じゃないですか!」 「そうかなぁ。ありがとう」  お世辞というわけでもなく、スタイリッシュな名前だと思ったのは本当だ。  鷹司のどこか照れたような表情に、どうにか真矢の真意は伝わったようで安堵した。  名前を間違えるなんて失礼なのに、自然な笑みと穏やかな雰囲気は崩さなかった彼。  この人なら大丈夫そうだ、とようやく不安が薄まって消えて行くのを感じた。
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