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「あったの?」
みんなが画面を覗き込む。
『鷹斗 お誕生日おめでとう』
「これ、鷹斗の事? お母さんなのかな?」
「多分……いや、きっとそうだ」
喉の奥に何かがこみ上げて来た。つかえて上手く声が出ない。
そのコメントを書いた人物のニックネームは「コレコレ」だった。「コレコレ」は俺の小さい時の友達、それも誰にも見えない俺だけの友達だった。
1人で絵を描くのが好きだった。お絵かき帳を広げては「コレコレ」の絵を描いていた。
「これ、誰?」
「コレコレ! 友達なんだ」
「そうなの」
「こっちがコレコレのお母さんとお父さん。そしてお兄さんお姉さん、妹、弟……」
「家族いっぱいいるのね」
「うん。だからコレコレの家の車は飛行機みたいに大きいんだよ!」
俺は大きく両手を広げた。母親は楽しそうに笑った。
想像上の友達の事は俺と母親2人だけの秘密だった。母親は笑顔で俺の妄想話を聞いてくれた。
俺は涙を食い止めるのに必死だった。拳を握りしめ膝に押し当てた。
「メッセージ送ってみたら?」
野村さんがそう言ってメッセージの送り方を教えてくれた。すぐにメッセージ入力画面が現れた。
俺は一言、「ありがとう」と書いて送った。
「やった! やっと見つけた!」
穂乃花は大喜びしていたが俺は放心状態だった。
しばらくすると返信のメッセージを告げる音が鳴った。俺はメッセージボックスを開いた。そこには「優しさ」が入っていた。
〈終〉
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