「優しさ」をたずねて

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 焦げ臭い。むせ返るほどの煙に起こされた。 「どうしたんだ?」 「いいから窓開けて!」  急いで窓を開ける。朝の冷たい空気が部屋に流れ込む。せっかくあたたかかった体が一気に冷えた。 「何やったんだ……あっ」  流しで穂乃花が焦げたフライパンをガリガリ洗っていた。 「ごめん、フレンチトースト作ろうと思ったんだけど……」  皿の上には真っ黒になった”何か”が乗っていた。 「どうやったらそんなに焦げるんだ」 「家でやった時は上手くできたんだけど……」 「穂乃花の家の焦げ付かない高級なフライパンとは違うんだ。ああ、そんなに強く擦ったらキズ付いちまう。それにまた水出しっぱなし……」  電気代が浮いたと思ったら水道代がかさんだ。それにフライパンももうダメだ。 「これ、食べられないよね」  パンもダメなのか。もう勘弁してくれ。 「モーニング食べに行こう! お詫びにご馳走するから。あ、その後フライパン買いに行こう。私でも失敗しないフライパン! ボーナス出たばっかりだから任せて」 「1人で行って来い。そしてそのまま家に帰れ」 「……」  穂乃花は顔を歪め大きな目を潤ませ、俺を睨んだ。
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