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1.出会い
寒い2月のある日、冴島陽向は定食屋のバイトを辞めた。
理由は店長がうざすぎるからだ。
パートのおばさんばかり優先して、シフトに全然入れてくれない。
その上態度も悪く、サボってばかり。
一緒に働けばため息や舌打ちの嵐。
普段は温厚な陽向も負けじとため息をつきまくりながら仕事をしていた。
1ヶ月前「実習始まるんで来月で辞めます」と店長に伝えたら「はい、わかりました」と、ため息と素っ気ない返事が返ってきた。
「いてもいなくても変わんないし。むしろ、いない方がいいわー」とか思われているんだろうな、と心の片隅で陽向は思った。
嫌な気持ちで働いているのはお互い様なんだろうけど。
こんなんで働くならお金もらえない方がマシだ、と思い最後の月は2回しかシフトを入れなかった。
新しいバイト探さなきゃな…。
最後の勤務を終えた陽向は、オレンジから紺色に染まりかけた空の色の中、自転車を漕ぎながら考えた。
次は人間関係の面倒臭くないところがいい。
帰り道、近所のコンビニに寄り求人情報誌を手に入れた。
家に着き、玄関の鍵を開ける。
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