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「そもそも、あんたは理想が高すぎるんだよ。なんでもあんたの理想通りに動いてくれる、少女漫画のヒーローみたいな完璧な彼氏なんて、そうそういないでしょ。お互いの考えかたをすりあわせるための努力と我慢が必要なんじゃないの」
「わかってるよ。でもどこかにいるとは思いたいじゃん、完璧な彼氏が」
「理想の恋人を持ちたいなら、方法はふたつしかないと思うよ。どこかに存在しているかもしれない理想のひとを頑張って探すが、今の彼氏を理想に近づくよう教育するか。わたしは、教育するほうがよっぽど楽だと思うけど」
「そうだろうけど、嫌。わたしが言わなくても、わたしへの愛ゆえにわたしが望む行動をしてくれるひとが理想なんだから。わたしがこうしてって言わなきゃいけない時点で、もうアウト」
美人にしか許されない、ひどい女王様発言だ。実優は、「傲慢。非現実的」と切り捨てて、チキンをかじった。冷めかけていて、スパイスの辛味以外の味はわからなかった。絢香がおおげさに吐息をつき、うなだれた。
「優実って辛辣」
「わたしが優しくないのは知ってるでしょ」
「うん、でもね」
絢香は上目使いで、気弱な声を出した。
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