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「うーん、どうだろ」
絢香は頬杖をつき、首をかしげた。
「やっぱり、最初は好きだから付きあうんだけど、そういうちょっとした嫌なところを知ると、すぐ冷めちゃう。好きが減っていっちゃうんだよ。だから、そうだね。本当に好きかって言われるとね……」
曖昧に言葉を切り、絢香は視線をさまよわせる。もっとはっきりと聞きたくなって、実優は「でも」と言う。
「渡辺のことは好きだったよね」
突然出た名前に、絢香は大きな目を一瞬見開く。しかし、その目はすぐに柔らかく細められた。
「そうだね、好きだったね」
懐かしさを含んだ言葉には、愚痴などとは全く違う重みがあった。それに傷ついている自分を、実優は心の中で嗤う。傷つけられるために言ったのに。
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