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あの日も、学校が終わった後「会いたい」とラインが来て、夜のファミレスに駆けつけた。別々の高校に進学したから、会うのは久しぶりだった。絢香は、駐車場の柵に寄りかかっていた。なにかにすがらないと、崩れ落ちてしまうかのように。柵に巻きつけられたイルミネーションのまばらな光は、絢香の小さな身体さえも照らせないほどに弱かった。実優は駆け寄って、なにも言わず、聞かず、そのまま抱きしめた。耳元で、絢香が不規則に震える息を漏らしているのが聞こえた。
ふたりが別れた理由について、さまざまな憶測や噂が飛び交った。本当の理由はわからなかった。実優は聞かなかった。聞きたくもなかった。冷たく白い手を握っているのが、他の誰でもない自分だということ以外、なにもいらなかった。
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