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もう一度聞くと、絢香は「うん」と子どもみたいにうなずいた。「やっぱり」と言って、実優は席を立った。
「ちょっと実優、どこ行くの」
「ドリンクバー」
「待って、わたしも行く」
慌てて立ち上がり、テーブルにぶつかったのか「いたっ」と声をもらした絢香にかまわず、実優はドリンクバーで二杯目のコーヒーを淹れた。席に戻り、苦い液体をひと口含む。絢香はオレンジジュースをストローでかき混ぜながら「それがさあ」と口を開いた。
「今日、啓太くんとデートだったんだけど。横浜にイルミネーション見に行ったあとね」
「待って、洋平くんとは別れたのね?」
「あ、うん、そう。啓太くんは今彼。それで、イルミネーション見たあと、レストラン予約してるって言われて。行ったらさあ」
絢香は一旦言葉を切った。美しくネイルの施された指先が、ぎゅっとストローを握る。
「そのレストランって、ファミレスだったんだよね」
実優はしばし沈黙してから「あー、なるほど?」と眉根を寄せた。絢香はそれを共感ととったらしく、「ひどくない?」と不快感をあらわにした。
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