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食べたものを即座に燃料に変換し、絢香の愚痴はヒートアップする。今日のイルミネーションデートだけではなく、その前から彼氏にはいろいろと不満があったらしい。絢香のほうが彼氏より少し重い荷物を持っているのに気づかなかったり、道路の車線側を歩いてくれなかったり、デートの別れ際、「もうちょっと一緒にいたいな」というさりげないアピールに気づかなかったり。どれも、彼氏に悪気はないだろう、ほんの些細なことだった。
そもそも、絢香が付き合う男性に、本当に性格が悪いひとはいない。話を聞いている限りでは、基本的に誠実で、まあまあ優しくて、かわいい彼女のことが大好きな、普通の男のひとばかりだったと思う。ただ、絢香が彼氏にしてほしいことと、彼氏がしてくれることが、食い違っているだけで。
「もうさ、今日のことがなくても正直限界だったんだよね。別れようかな」
「でもあんたさ、前も同じような理由で別れてなかったっけ」
同じようなくだらない理由で、とは言わないでおいた。
「なんだっけ、誕生日プレゼントが、安物のイヤリングだったんだっけ?」
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