雷鳴のように

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  *  *  *  旧盆の季節もとっくにすぎて、10月になった。  10月は、台風が多い。  今年は風を呼ぶデイゴが咲いたから、吹き荒れることだろう。  ざ、ざぁー……  波の打ちつける砂浜に座り込み、三線をかまえる。  脳裏に刻まれた音を義甲(ゆび)ではじくたび、高揚感に満たされる。  なぁ美波(みなみ)。  お前の三線で、お前のつくった曲を弾いてるんだ。  こんなこと言うの、柄じゃないけど。  まるで、お前を抱きしめているような気分になるんだよ。  一度は終わってしまった恋。  そうかもしれないな。  けど、諦めの悪い俺に見つかってしまったのが運のつき。  お前が言葉にできなくてしまいこんでしまった(おもい)に、俺は、(ことば)を返すよ。  なぁ美波。  お前の音色は、子守唄みたいにやさしかったな。  なぁ美波。  俺の音色はどうだ?  お前みたいにやさしい音色じゃないだろ。  お前を、お前だけを想ってほとばしる感情が、おだやかなものであるはずがないだろ。  これはそう。  嵐の空に轟く雷鳴のように。  ゴロゴロ……  水平線の彼方で、厚い雲が渦巻いている。  遠くでこだまする雷のように、俺はいつまでも、夏が終わったとしても、お前への想いを叫び続ける。 「──『遠雷(えんらい)の唄』」  磯の香る潮風を吸い込み、俺は唄う。  なぁ美波。  愛してる。  来世で、待ってろ。 【終】
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