愛と暗殺計画

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 すると、徳野幸人は俯きました。何か悩んでいるようにも見えます。やがて、顔を上げ、僕に言いました。 「俺、小暮さんに告白しようと思ってるんだ」 「えっ」  思わず、そう声が出ました。 「修学旅行のときも言ったけど……小暮さん、すごいんだよ。あんなに上手に気配り出来て、普通に、人としてすごく尊敬してるんだ。尊敬してるし、その……一緒にいると楽しくて……だから……」  彼はまた俯きました。上手く言葉に出来ず喉の奥で言葉が突っかかってるように思えます。僕はそんな彼に構わず、こう問いました。 「君はなぜ人を愛するの?」  ぱっと彼は顔を上げました。僕の率直な疑問です。数週間前の修学旅行、あのときから僕はずっと疑問を抱いていました。彼女は暗殺しなければなりません。いずれ死ぬ。いえ、僕が暗殺しなくても、人にはいずれ別れが来ます。わざわざ悲しみたいと言うのでしょうか。 「なぜって……す、好きだからとしか言えないけど……」 「なぜ好き? 彼女の父が社長だからといった、うまいところをついている?」 「えっ、ちがっ、それは違う!」  彼は顔を真っ赤にして声を張ります。
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