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中学に上がるとすぐに、K大学付属病院に入院することになった。
僕の症状が一向に上向かないので、母親としては見るに耐えなかったらしい。
そして入院から三日目。担当医が母親を別室に呼んだ。
「お母さん、大変残念ですが、ご子息のことは諦めてください。ついては、これ以上の検査はもう止めて楽にさせてあげたいと思いますが、いかがですか」
母はショックを受けながらも、その提案を受け入れたという。
その当日、母の口から退院することを告げられた。
翌日になっても詳しい事情を知らされないまま、病室の荷物をまとめる母の丸い背中をベッドの上から見守っていた。
シングルマザーの母は、たよりない足取りで病室を後にした。
その重苦しい雰囲気に僕は何もいえず、看護師とともに病院の待合室へと足を向けた。
梅雨を迎えた、六月のことだった。
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