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太陽と少女
奇喜談譚(ききだんたん)
奇喜談譚 第一話
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登場人物
日ノ本 明美(ひのもと あけみ 少女の面影を残したポワポワした可愛い女性 将来の夢は漫画家)
空草 未沙(からくさ みさ 吸血鬼のクールな女性、レンタルビデオ店で夜勤のバイトをしている。)
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明美「私、心って好奇心には勝てないと思うんです!」
未沙(と・・・唐突に言い放ったのは、バイト先のレンタルビデオ店、同僚の明美だ。彼女は、お花畑で遊ぶ少女がそのまま大人になったような人物でとても可愛らしい娘だ。まぁ、体はともかく中身は少女みたいだから「よく未成年に間違われるんです~」と、涙目でぼやいているのだが・・・)(笑)
「いきなりどうしたのよ?明美ちゃん??」
明美「未沙さん・・私この前、漫画研究の為に宇宙人の映画を観まして。凄っく感動したんですよ♡宇宙人と地球人の絆を描いた作品だったんですけどねっ!ああ・・・宇宙人はみんな良い人なんだ!って・・私その時、本気で思ったんです!!」
未沙「・・・それはどうかなぁ?私が観た宇宙人の映画は、地球を侵略に来た宇宙人が人間の脳を操って人間同士で戦争させるヤツだったよ。」
明美「それで、ですね。未沙さん!宇宙人に会えるって話を聞いたら、会いに行きますか?もち、私は行きます!!」
未沙「・・・うん。私の話、聞いてた??人間の脳を操るヤツ・・」
明美「・・・まぁ、それはそれ。これはこれ。・・で、実は行って来たんですよ。UFO がよく目撃されるポイントに!!そしたらですねぇ・・・」
未沙(期待に豊満な胸を膨らませ・・明美は眼を輝かせていた。・・・この娘は・・・なんというか危なっかしいんだよなぁ。目的の為なら、考えなしに突っ込んで行く気概があるとことか。まぁ、行動力のある事は良い事なんだろうけど・・・)
・・・なんて、真面目に考えていたら。私は「彼女」を思い出してクスクスと、笑ってしまった。
未沙「ふふっ。」
明美「あ・・何笑ってるんですかぁ!未沙さぁん!!」
未沙「ふふ・・ごめんなさい。昔、あなたにとても良く似ている同胞がいたなって思い出しちゃって。」
明美「へぇ、どんな人だったんですか?」
未沙「そうねぇ、彼女は・・・とても好奇心の強い娘だったわ。」
・・・夕陽が海に沈むように、ゆっくりと・・ゆっくりと・・私は、月夜に生きる昔の自分を思い出した・・。深海の様に冷たく、鉄の様に固い・・昔の自分を・・
ヴァンパイアの私がミアと出会ったのは、かれこれ300年くらい前だったかしら・・当時は、私もバリバリの武闘派で同胞の二アと一緒に都(みやこ)の騎士団相手に暴れまわっていたっけ・・二アとは、なんなくウマが合って私達は本当の姉妹みたいに楽しく過ごしていたわ。
騎士団長「くそ・・!たかが女と子供に、何を遅れを取っている!!一斉にかかれッ!!!」
二ア「人間ごときが・・・いくら束になろうが無駄なのよッツ!!!」
騎士団全員が、ニアに向かって突撃した瞬間・・彼女の鋭い爪が、空気と一緒に騎士団の身体を切り裂いた。
騎士団「グアッツ!!」
ニア「ふん・・あんた達は私達のエサなんだから!大人しく食されなさい!!」
ミサ「二ア・・殺すなよ。」
二ア「わぁ〜ってるわよ!あんたのルールとやらに従って殺しはやってないでしょ!!」
ミサ「ならいい。血を頂いたら、ずらかるぞ・・・もうすぐ夜明けだ。」
この頃は、現代の様に輸血用の血液も無かったので・・食糧の調達はいつも原始的なやり方で調達していた。食事を済ませて寝床に帰る・・寝床には、廃村となった町・・洞窟等に寝具を持ち込んで寝ていたっけ。・・こういう生活を私達はしていたのだ。
ミサ「さて・・寝るか。」
二ア「ねぇ・・ミサ。」
ミサ「なんだ?」
二ア「ミサってお日様を観た事ある?」
ミサ(これからカビ臭いベッドで就寝。と、いうところで・・まるでベッドサイドストーリーをせがむ子供のように、二アが私に尋ねて来た。)
ミサ「・・・ああ、あるぞ。私は純血種じゃないからな・・人間だった頃に毎日拝んでたよ。まぁ・・昔の話だがね。」
二ア「そう・・なんだ。・・・綺麗だった?」
ミサ「・・・・忘れた。」
ミサ・・とは言ったものの、実際は憶えていた。太陽は神の化身・・いや神そのもののような神々しさで、毎夜、闇の終わりを告げていたのだ。「それ」を私は毎朝拝んでいたのだから、忘れる筈がない。・・だけど、それを口にしてしまったら、好奇心の強いこの娘は少しだけでも観てみたい等と戯言をほざくに違いない。ヴァンパイアにとっては「それ」が決定的に致命的な事なのだ。
明美「・・・そ、それで・・・どうなったんですか?」
生唾を呑む明美を横目に、私は少し時間を置いて続けた・・
未沙「まぁ・・わかるだろう?ニアは・・彼女は、好奇心が強かったんだ。君と同じくらいにね・・・。「時に好奇心は危険な劇薬という事さ。」」
明美「・・・・悲しい・・物語ですね。」
未沙「・・・え?・・もの・・がたり??」
明美「私、決めました!!未沙さん・・・私と一緒に漫画家になりましょう!!」
未沙「ちょ・・なんでそうなるのよっ!!」
明美「だって未沙さん、即興でこんな素敵なお話作れるなんて。絶対漫画家に向いてますよ!!」
未沙「・・・私の創作だと思っているのかしら?例えが悪かったのだろうか・・(汗)いや・・この娘には、何を言ってもダメなような気がする。」
明美「ね?いいでしょ??未沙さ〜ん。」
未沙「まったく・・太陽のように明るい笑顔の前じゃ・・私の説教も意味はないか。」
続く・・・
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