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気根をガサガサとかき分けて、遺跡に出る。さっきまではしなやかだった気根は、ただの硬い枯れ枝になっていて、胸がチクリと痛んだ。思わず足を止めて、気根に手を触れる。
――さようなら……
「ケント、行こっ!」
スレイが手を引っ張った。
遺跡は天井が崩れ、割れて床に落下した石がさらに粉々に砕け、破片が飛び散っていた。真っ暗だった遺跡に、崩れた箇所から太陽の光が差し込んでいる。
「コウモリ君っ!」
スレイが斜めがけしている布の鞄を広げると、コウモリ君が中に飛び込んだ。
『ピューイ!』
「クルン、呼んでる!」
「でも来た道は、こっちだぞ」
亮がクルンとは反対の方角を指さした。
『リョウ。そちらは崩れてしまって通れないようです』
「えっ、じゃあ、帰れないんじゃ……?」
「安全な場所に行ってから、出口をさがそう!」
オレは亮の背中をポンと叩いた。亮もオレの背中を叩き返してきた。ジョーゴの前のいつもの合図だ。亮の瞳に灯がともる。
「行こう!」
オレたちはクルンが呼んでいる方角に向かって走り出した。
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