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遺跡の中が真っ暗だったときは見えなかったが、遺跡の壁に沿って絵が帯状にずっと彫刻してあった。壁画だ。貴重な文化遺産だということもあるけど、それ以上に誰かが描いた絵に傷を付けてはいけない気がした。
――どうしよう
迷っていると、クルンが舞い戻ってきて、オレの肩にとまった。そしてくちばしで絵をコツンコツンとつついた。
「傷つけちゃダメだよ……、って、あれ? クルンがいる!」
壁画の中の長い剣を持って戦っている戦士の頭上に、クルンによく似た鳥が加勢するように飛んでいる。
クルンが違う場所に行って、またクルンに似た鳥の絵をつつく。肌色に近い壁に描かれた絵は、ところどころ彩色してあり、華やかだ。しかしクルンの絵は色もついていないし大きさも小さく、あまり目立たない。
クルンはしきりに自分に似た鳥をつついてアピールする。
「わかったわかった。クルンに気が付かなくてゴメンな」と亮が笑うと、クルンが亮の頭をコツンとつついた。
「痛って! なにするんだぉ」亮が唇をとがらせて、頭をゴシゴシこすった。
「あ、そっか! クルンの向きだよ!」スレイが壁画のクルンを順番に指さした。
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