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「無事でよかったですね、亮」  コン・ティンがくすくす、と笑いを含んだ声で言うと、亮は真っ赤になってアリババパンツの破けた部分を手で隠した。 「コン・ティンさん、ありがとう。後ろに引っ張ってもらわなかったら、今頃オレの……」  亮は結末を想像したのか、ブルルッと身を震わせ足をギュッとより合わせ、手を足で挟んだ。 「たいしたことではありません。それより今は、それどころじゃないみたいですよ」  コン・ティンは唇に指をあてシイッと言った。 「遺跡からデバターの残滓(ざんし)がいなくなり、魔物を防ぐ力も消えてしまいました。魔物が侵入してきたようです」  オレは耳を澄ませ、あたりにただよう気配に感覚をとぎすました。 「何か……いる!」  けれど目を凝らしても、魔物の姿は見えない。 「あれ……? 風が生臭(なまぐさ)い……?」  スレイの声が首を傾げて首筋に手をやる。三つ編みが揺れて肩で跳ねる。 「なんの臭い……」 スレイが振り返ろうとした時、柱の影になっている死角から、真っ赤な瞳の獣がスレイ目掛けて飛び掛かってきた。
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