71人が本棚に入れています
本棚に追加
今まで見た中で一番大きなダンプカーよりも大きな獣だ。顔を覆うたてがみが後ろにたなびき、体の大きさからは信じられないほど、体をやわらかくしならせてジャンプしているのが、スローモーションみたいに見える。デカ過ぎるけど、あれは……、あれは!
「ライオンだ! スレイっ、逃げろー!」
「え?」
――しまった!
声をかけたせいで後ろを振り返ろうとしていたスレイは、きょとんとしてオレに視線をとどめてしまった。それは致命的な1秒。
クルンがスレイよりも先に気が付き、ライオンに向かって真っ直ぐに飛んで行く。だけどあの獣の牙がスレイの首を食いちぎるほうがきっと早い。間に合わない!
「スレーイッ!」
スレイに手を伸ばす。オレの指先がスレイの服に一瞬引っかかる。けれどかぎ状に曲げた指は、スレイの白い服の裾からすぐに外れて、宙をかいた。
鋭い牙がギラリと光る。やっとライオンに気が付いたスレイの瞳に恐怖が浮かぶ。
「シンバ!」
スレイがライオンの名を呼ぶ。
――スレイが知っているということは、シンバは神獣なのかっ?!
最初のコメントを投稿しよう!