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 今まで見た中で一番大きなダンプカーよりも大きな獣だ。顔を覆うたてがみが後ろにたなびき、体の大きさからは信じられないほど、体をやわらかくしならせてジャンプしているのが、スローモーションみたいに見える。デカ過ぎるけど、あれは……、あれは! 「ライオンだ! スレイっ、逃げろー!」 「え?」 ――しまった!  声をかけたせいで後ろを振り返ろうとしていたスレイは、きょとんとしてオレに視線をとどめてしまった。それは致命的な1秒。  クルンがスレイよりも先に気が付き、ライオンに向かって真っ直ぐに飛んで行く。だけどあの獣の牙がスレイの首を食いちぎるほうがきっと早い。間に合わない! 「スレーイッ!」  スレイに手を伸ばす。オレの指先がスレイの服に一瞬引っかかる。けれどかぎ状に曲げた指は、スレイの白い服の裾からすぐに外れて、宙をかいた。  鋭い牙がギラリと光る。やっとライオンに気が付いたスレイの瞳に恐怖が浮かぶ。 「シンバ!」 スレイがライオンの名を呼ぶ。 ――スレイが知っているということは、シンバは神獣なのかっ?!
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