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 スレイの胸元が赤く光っている! きっと、デバターがスレイの命の危機に反応しているんだ。デバターなら間違いなくスレイの命を救えるに違いない。 ――だけど! 「デバターになっちゃ、だめだああああああ!」  体が燃えるように熱くなる。細胞が沸騰するような感覚。オレはすべての力を足に込め、グッと踏み込んだ。石で作られた床がボコッとへこみ、砂煙が舞い上がる。割れた床をスターティングブロック代わりにして、前に飛び出す。  シンバが噛みつくより先に、スレイの前に出られれば、守れる!  目の前で大きく開いた口に、唾液で濡れた巨大な牙が並んでいる。でかい口が迫り、そのまま吸い込まれてしまいそうだ。シンバの息が熱くて、体感温度が二度上がった。 ――もしかしてオレ、自分からライオンの餌になろうとしてる?  チラッと頭の片隅をよぎった声に、ブルッと震えが走る。本当に無謀だ。だけど、引くわけにはいかないんだ。オレは弱気な心の声をかき消すように、声を張った。 「くっせえええええっ! 歯、磨けよ!」
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