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つまり、スレイともう少しいたい気持ちが、帰らなきゃという気持ちよりずっと大きかったんだ。
――ま、いっか! 暗くなる前に帰ればいいや。ここまでは一瞬で移動したんだから、一瞬で帰れる……ハズ
スレイが手渡してくれたズボンは、薄い生地で太ももの所が広いので、空気が入って涼しいように出来ている。スレイは「これ、アリババパンツ」と教えてくれた。上着も同じ薄い生地で出来ていて、袖がなかった。タンクトップみたいな形だ。靴はペタンコで布で出来ている。
スレイにせかされるまま着替えると、さっぱりして気分がよくなった。ふくらんだズボンに風が抜けていく。
空気を大きく吸い込むと、ほんのり甘い香りがした。どこかで花が咲いているんだろうか。
――甘い香り……。甘い……。あっ!
「スレイ、オレの鞄知らない? 肩からかけていたと思うんだけど」
「これ? ケントの傍に落ちてたよ」
「お、これこれ! オレ、クルンの泣き声聞いて、誰かが迷子になってると思ったんだ。だから迷子の誰かを見つけたら、一緒に食べようと思って」と、卵焼きを取り出す。
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