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「な、なんか聞こえるよ」
「だだだダイジョブ、ままま、まだ遠いから」
スレイは強気に言ったけれど、声が震えてる。スレイも恐いんだ。
コン・ティンの会話の内容はたわいもないことだったけど、建物のあちこちから、ささやくような声が響いてくるのが不気味だ。まるで高速で移動しているみたいだ。
スレイのあとについて歩きながら、声のする方に素早く頭を振った。けれどコン・ティンの姿はチラッとも見えない。
「なあ、コン・ティンってどんな形してるんだ?」
「人間と同じ」
「でも人間じゃないんだ?」
「魔物。木に棲んでいて、枝に腰かけてる。誰かが通りかかると、嗤う。嗤われた人間、狂って魂を抜かれちゃう」
『きゃははははは!』
「うわっ、きたー!」
「わわわわー!」
オレとスレイは、思わず走り出した。
――だけど、怖い訳じゃないよ。スレイとはぐれないように走っているだけ。ホント。
『きゃはははははは!』
「やめろォ! 追いかけてくるな!」
息が切れる。でも足を止めたら、殺られる! 追うはずが、いつの間にか逃げている。
「ケント、待って! 大丈夫、ケントは大丈夫だから。封印を、」
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