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――あ、これ、雪山で聞いた言葉だ……。あの時は意味がわからなかった。でも今なら分かる。「助けて」だ。  スレイはなんて言ってたっけ。そうだ、スレイは探してるって言ってた。一緒に戦ってくれる人を探してるって。 『デバターになるの、絶対、イヤ!』って言ってたのに。オレのためにデバターになろうとしてる。  助けて、って言ったのは、スレイじゃない。クルンの声真似だ。だけど、だけど、「助けて」っていうのは、きっとスレイの本当の気持ちなんだ。  クルンが果敢にコン・ティンの足をくちばしでつついている。 「やめろ、痛いじゃないか、この、アホ鳥っ!」  コン・ティンがクルンを蹴ろうと足をばたつかせた。それでオレの首をしめている力がほんの少し緩んだ。 「はっ」  オレは全身に力を入れた。体を倒しながら、手で強くコン・ティンの手を跳ね上げ、喉から振り払った。体を回転させると、地面が頭スレスレに通りすぎる。回転を利用して足を振り上げる。ヒュンっと風きり音が鳴った。コン・ティンの喉元をオレの足先がかすめる。 「くっ!」
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