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コン・ティンがうやうやしく言うと、ヤドリキの幹の真ん中が開き、トンネルのようになった。ハッとしてコン・ティンを見ると、手を胸にあてて、微笑を浮かべた。きっと、このトンネルの先に姫ばあちゃんがいるんだ。
クルンがオレの服をくわえ、カバンは首にかけて運んできてくれた。フリースの長袖シャツを着ただけで、耐えられないほど暑い。思わず涼しそうなヤドリキの中に駆け込むと、ヤドリキの枝がカーテンを閉じる様にトンネルの入口を塞ぎ始めた。
「スレイ! また、会える?」
スレイはオレの目をまっすぐ見つめ、「た・か・ら・さ・が・し、しよっ!」と言って、いたずらな顔で笑った。
――宝探し……
そういえば、出会った時もそんなこと言ってたな、と思い出す。記憶に気をとられたのは数秒のはずなのに、もうスレイ達が見えなくなってきた。慌ててスレイとクルン、そしてコン・ティンに大きく手を振った。
「じゃあ、また」と言い終わらないうちに、完全に入口がふさがってしまった。
オレはさみしさを振り払うみたいに、暗闇をやみくもに走った。
ぜいぜいと息が荒くなったころ、唐突に足がザクッと沈み込んだ。
――雪だ!
振り返るとトンネルもヤドリキも消え、何もなかったみたいに雪景色が広がっていた。
オレは姫ばあちゃんに駆け寄った。
「ただいま!」
「おや、ケント。早かったねえ」
空を見上げると、出かけた時と同じ明るさだった。どうやら、スレイが言った通り、タ・プロームとは時間の進み方が違うらしい。
きっと、スレイ達にまたきっと会える。ふとそんな予感がした。
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