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 プロフェッソールは、仰向けに倒れ込んだ状態で、はあはあと胸を上下させた。汗が顔から伝い落ちていく。メストレが手を引っ張って立たせると、拍手が巻き起こった。息をするのも忘れるようなふたりの試合に、みんな興奮してた。  だけどオレだけはパンデイロを弾いていたコン・ティンに近づき、腕をつかんだ。 「ちょっと、こっちこい!」引っ張って体育館の外に連れ出す。 『久しぶりの再会を喜んでくださらないのですか? 我が(あるじ)?』 「簡単に魅了しちゃダメなの!」 『みな楽しんでいるようでしたが』 「とにかく、ダメ!」  コン・ティンは黙って肩をすくめた。絶対、守らない気がする。 「えーと、ひとり?」  スレイの姿を探したけど見当たらない。クルンの鳴き真似も聞こえない。 『スレイならいませんよ。ナーガが狂ってしまったので、対応に追われているのです』 「ナーガ? ええと、それって誰?」 『遺跡の守護神である蛇の神です』 「へ、蛇?」 『蛇神です。では、行きましょう』  コン・ティンは優雅に腰を振って歩いていき、手近な木に向けて手をかざした。木の枝から、ガジュマルの根が何本も垂れ下がってきた。 「すげえ」
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