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『ふふ。私は樹に棲んでいる魔物ですから、樹に道を拓くことができます』
「もしかして、クルンも道を拓けるのか?」
『あれは空の魔物ですから、空に道を拓きます』
――あー、だから最初にタプロームに行った時、崖から落とされたのか、オレ。
『どうぞ』
コン・ティンに促され、樹の根のカーテンをくぐる。
先を歩くコン・ティンが、垂れ下がる木の根に見え隠れする。暗い道を進むと、強い日射しと暑い空気が顔にぶつかってきた。
「あっつ!」
眩しさに目を細めて立ち止まる。口を大きく開けて、空気を吸い込む。
――帰ってきたんだ!
すーはーと深呼吸していると、尻を先のとがった何かで突っつかれた。
「痛っ! な、なんだ?」
体をひねって後ろを振り返ると、クルンがキツツキみたいにオレの尻をつついていた。
「ちょっ! クルン、やめろよ。痛てっ」
『チュオイポーン』
クルンがスレイの声で言った。
「スレイが助けてって言ってるのか?」
クルンは何も返事をせず、ちょんちょんと進んでは振り返りオレを見る。
「ついてこいってことか?」
追いかけていくとクルンは空に舞い上がり、ぐんぐんスピードを上げた。
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