始まりの日

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 そこまで考えると、オレはご飯に味噌汁をぶっかけて、急いでかき込んだ。茶碗とお椀を重ねて、台所に下げる。 「ごっそーさま! 姫ばあちゃん。卵焼き、あとで食べたいから、サランラップに包んでくれる?」 「はーい」  姫ばあちゃんは何も聞かずに、卵焼きをラップにくるんで渡してくれた。ちなみに、姫ばあちゃんっていうのは、ひいばあちゃんのこと。『「ひいばあちゃん」と呼ばれると、年を早送りで取ってしまう気がするよ』って言うから、姫ばあちゃんと呼んでるんだ。実際には、オレよりも背が小さくて、目尻に細かいシワがいっぱいある姫ばあちゃんは、ザ・おばあちゃんっていう感じだけど。 「出かけてくる!」  オレンジ色のダウンコートをはおる。毛糸の帽子をギュっとかぶって、ふわふわの髪を抑えつけた。5年生の標準身長だけど、童顔なのがちょっとコンプレックス。茶色の髪があちこちにはねて余計に幼く見えるから、帽子で隠してるんだ。かわいいって言われて喜ぶのは小学2年生までだぜ。 「気を付けてなぁ。暗くなる前に帰っておいでよぉ」
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