71人が本棚に入れています
本棚に追加
スレイが叫ぶ。コン・ティンが木の蔓を鞭のようにして投げ、オレの手首に巻きつけて引き戻した。
『大丈夫ですか、我が主?』
「う、うん」
「ありがと、コン・ティン」
スレイが言うと、コン・ティンはフンと顔をそむけた。
『お前のために助けたのではない。礼は無用だ』
「はいはい、そうですかーっ。ケント、赤い水、ナーガの毒ね。触れただけで皮膚がただれちゃうよ。もし落ちたら……」スレイはブルッと震えた。
「毒の水なのか……! ふたりとも、ありがとう」
スレイとコン・ティンは嬉しそうに頬をゆるめたが、顔を見合わせるとおたがいにプイっと顔をそむけた。
――あらら……、仲良くできないのかなァ
オレは小さくため息をついた。
「あれ? なんか池の水、泡立ってない?」
池の真ん中あたりを指さした。無数の泡が水底から登ってきては弾け、水面が剣山のように波立っている。
「ケントっ!」
スレイがぶつかってきた。ひときわ大きな水しぶきがオレのいた場所を赤く染める。
「あ、あれは……」
聞かなくてもわかる。蛇神ナーガだ! 見上げる程の大蛇には、頭が七つある。美しかったはずの白い鱗は、赤い毒でうす汚れていた。
「ナーガ!」
最初のコメントを投稿しよう!