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「ナーガ、やめて!」
スレイが悲痛な声で呼びかけたけど、全く聞こえていないみたいだ。ナーガの瞳は曇り、何も見ていない。7つの頭を振りみだし、毒をまき散らしている。赤い水がどろりと粘度を増していく。
「どうしたら……?」
スレイは両手を胸の前で組み、ナーガを見上げ、一歩、二歩と近づいていく。
「スレイ、危ないから」と腕を引き戻すと、「ケントぉ……」と、スレイが涙声になって、オレの腕に顔をこすりつけた。
――なんとかしないと! でもどうすれば?
「苦しそうですね」
コン・ティンは頬に指先を当て、首を傾げた。
「苦しそう? ナーガが?」
「ええ、そうです」
言われて見ると、毒をまき散らしているのは、苦しくて体をくねらせているせいのようにも見える。
――自分に噛みつこうとしてる? なんで……?
オレは目をこらして、ナーガを見た。首を伸ばした先にひときわ赤い鱗があった。形も他の鱗とは逆向きについている。
「スレイ、あの鱗、変だ!」
オレはナーガに向かって走った。
「コン・ティン、蔓を使って、オレをナーガに向かって投げろ!」
「ケント、ダメ―! 下は毒の水なんだよ。危ないよ!」
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