7/9
前へ
/155ページ
次へ
「ナーガ、やめて!」  スレイが悲痛な声で呼びかけたけど、全く聞こえていないみたいだ。ナーガの瞳は曇り、何も見ていない。7つの頭を振りみだし、毒をまき散らしている。赤い水がどろりと粘度を増していく。 「どうしたら……?」  スレイは両手を胸の前で組み、ナーガを見上げ、一歩、二歩と近づいていく。 「スレイ、危ないから」と腕を引き戻すと、「ケントぉ……」と、スレイが涙声になって、オレの腕に顔をこすりつけた。 ――なんとかしないと! でもどうすれば? 「苦しそうですね」  コン・ティンは(ほほ)に指先を当て、首を傾げた。 「苦しそう? ナーガが?」 「ええ、そうです」  言われて見ると、毒をまき散らしているのは、苦しくて体をくねらせているせいのようにも見える。 ――自分に噛みつこうとしてる? なんで……?  オレは目をこらして、ナーガを見た。首を伸ばした先にひときわ赤い鱗があった。形も他の鱗とは逆向きについている。 「スレイ、あの鱗、変だ!」  オレはナーガに向かって走った。 「コン・ティン、蔓を使って、オレをナーガに向かって投げろ!」 「ケント、ダメ―! 下は毒の水なんだよ。危ないよ!」
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加