71人が本棚に入れています
本棚に追加
オレは欠片をポケットに突っ込むと、階段を駆け下りた。先にテーブルに座っていた姉ちゃんが、オレをチラッと見た。
「ケント、夜うるさいよ。受験勉強してるから、静かにして。日之出高に落ちたらケントのせいだからね」
「なに? ケント、夜にゲームでもしてるの?」
お母さんが聞きつけて、口を挟んできた。
「いやいやいや、ゲームなんかしてないって!」
まったく身に覚えがないオレは、ブンブン首を振った。
「最近、変な夢みてるみたいでさ」
「夢?」
姉ちゃんが首を傾げる。ポニーテールがサラっと流れる。古風なセーラー服のリボンも揺れる。
「じゃあ、アレって寝言なの? すごい大きな寝言だねー」
姉ちゃんがクスクス笑って、パンをパクリとかじった。よかった。姉ちゃんの怒りは静まったみたいだ。
お母さんが卵を長方形の卵焼き器にコンコンと割り入れた。白身と黄身を混ぜて伸ばし、その上にスライスチーズとベーコンを散らして、コショウをふる。下側が固まって、上がとろりとしている状態になったら二つ折りにする。それをフライパンからするりと滑らせてパンにオン! 大好物のチーズ卵パンだ。
ケチャップをチー卵にかけていると、テレビから「アンコール遺跡」という単語が聞こえてきた。
ハッと耳をそばだてる。
『では、次です』
最初のコメントを投稿しよう!