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「えーっ! 終わっちゃった! 姉ちゃん、今、ニュース見てた?」
「見てるっていうか、聞いてたよ」
「で、なんて言ってた?」
「うーんと、少し前にアンコールの遺跡で地震があったの、知ってる?」
「そうなの? 知らなかった。大きかったの?」
「震度5。けっこう大きいね。その地震で壊れた井戸を修理しようとしたら、井戸の底から割れた仏像が出て来たんだって……。それがね、地震で壊れたんじゃないらしいよ。ちょっと気持ち悪いよね」
「へえ……」
割れた仏像、という単語が何か引っかかる。なんだろう?
「ケント! 早く支度しなさい! 亮君、迎えに来ちゃうわよ」
「いけね!」
オレは考えるのはひとまずやめにして、パンの残りを慌てて口に押し込んだ。喉につまったパンを牛乳で流し込む。ゴクッと喉がなったところで、タイミングよく亮が迎えに来た。
――タプロームはアンコール遺跡のうちのひとつだっけ。地震のせいで仏像が壊れたんじゃないなら、誰が? ……もしかして、魔物だったり?
考えに夢中になっていたら、亮が「……な?」と言って、オレの返事を待っている。どうやらオレに話しかけていたらしい。
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