始まりの日

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「はーい」と姫ばあちゃんに返事をして、雪用のブーツを履く。卵焼きは斜めがけのショルダーバッグの一番上に入れた。  外に出ると、どこもかしこも雪だった。晴れていれば雪に陽射しが反射してまぶしい位だけど、まだチラチラと雪が降っているから、昼間なのにどちらかというと薄暗い。 「ええーん」  はっきり聞こえた。やっぱり、まだ泣いてる。オレは声のする方にそうっと近寄って行った。 「あれ? どこだ?」  声は近い。それなのに姿が見えない。木の陰とかで見えないのかもしれない。いや、歩き回っているのかも。近くなったはずの声が、遠ざかっていく。オレは焦って声をあげた。 「おーい! 大丈夫か?」  ピタリと泣き声が止んだ。 「チュォイポーン」 「ちゅおい? え? なに?」 「うっ、うっ」  聞き返したら、また泣いちゃった。チュォイポーンって、どういう意味なんだろう? 知らない言葉だ。もしかしたら外国の子なのかも。やっぱり、一緒に来た人とはぐれちゃったんだ。 「そこにいて!」
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