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亮はポケットから小さな欠片を取り出して、耳に当てる。
「それって……! 捨ててくれって言ったのに」
「聞こえるんだ。声が」
「だ、ダメだ。それ、返してくれよ、亮」
「ケントが捨てたものを拾ったんだから、もうオレのだ」
亮はナーガが狂った時と同じ目をしてる。
「渡さない」というと、側転で近づいてきて、オレの顎に狙いを定めて蹴りを放ってきた!
「ケイシャーダ!」後ろにのけぞった所に亮の足がかすめる。「よけなきゃ、当たってたぞ! あぶねえだろ!」
――亮の奴、当てる気で蹴ってきた!
頭に血が上る。亮に向かっていこうとした時、スレイの澄んだ声が耳に飛び込んできた。
「おーい、のろま! こっこまでおいでー」
「え? スレイ何を……?」
「しっ! 中央祠堂までおびき寄せる!」
「なんでっ?」
「説明は後!」
「うー、わかった! 鬼さん、こちら!」
オレとスレイは駆け出した。無表情で追いかけてくる亮は、いつもとはまるで別人みたいだ。
タプロームの回廊は三重になっていて、複雑に絡み、繋がっている。スレイがいなかったら、すぐに迷子だ。
イラスト:鳴上 鳴様
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