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「わ、あああ! スレイ、なんで泣いてるんだ? 泣かないで!」  ガバッと体を起こしてスレイの顔を覗き込む。スレイの肩をポンポンとたたきながら、ゆっくりと記憶をたどる。 ――あー、そうだ。昨日は東京へ帰らなかったんだ。手に変な欠片が入り込んだまま、家に帰って、蛇神や亮みたいになったら大変なことになっちゃうから  オレが寝ていたのは、木で出来た台に厚手の布を敷いた簡易ベッドだ。床からは30センチ位の高さで、幅は大人が両手を広げた位。そして壁と天井は石で出来ている。 ――ここはタ・プローム遺跡の中にある、スレイの家だ  ようやく頭がはっきりしてきた……と思ったら、「アホッ!」 と、亮に頭をペシリと叩かれた。 「なにす……」  言い返そうとして亮を見ると、俺を見つめ返す目が、うっすら赤い。口から出かかった文句は、しおしおと喉の奥に後戻りした。 「スレイちゃん、ずーっと泣いてたんだぞ!」 「えと、ゴ、ゴメン」  亮はフンッと鼻息を荒く吐き出した。状況はよく分からなかったけど、スレイも亮もすごく心配してくれていたみたいだ。 「あの、さ。オレ、なんか変だった?」 「ん。とっても、変! しゃべってたよ。大きな声で」  スレイが激しくうなずき、背中で髪が縦にブンブン跳ねる。
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