71人が本棚に入れています
本棚に追加
「わ、あああ! スレイ、なんで泣いてるんだ? 泣かないで!」
ガバッと体を起こしてスレイの顔を覗き込む。スレイの肩をポンポンとたたきながら、ゆっくりと記憶をたどる。
――あー、そうだ。昨日は東京へ帰らなかったんだ。手に変な欠片が入り込んだまま、家に帰って、蛇神や亮みたいになったら大変なことになっちゃうから
オレが寝ていたのは、木で出来た台に厚手の布を敷いた簡易ベッドだ。床からは30センチ位の高さで、幅は大人が両手を広げた位。そして壁と天井は石で出来ている。
――ここはタ・プローム遺跡の中にある、スレイの家だ
ようやく頭がはっきりしてきた……と思ったら、「アホッ!」 と、亮に頭をペシリと叩かれた。
「なにす……」
言い返そうとして亮を見ると、俺を見つめ返す目が、うっすら赤い。口から出かかった文句は、しおしおと喉の奥に後戻りした。
「スレイちゃん、ずーっと泣いてたんだぞ!」
「えと、ゴ、ゴメン」
亮はフンッと鼻息を荒く吐き出した。状況はよく分からなかったけど、スレイも亮もすごく心配してくれていたみたいだ。
「あの、さ。オレ、なんか変だった?」
「ん。とっても、変! しゃべってたよ。大きな声で」
スレイが激しくうなずき、背中で髪が縦にブンブン跳ねる。
最初のコメントを投稿しよう!