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泣き声を頼りに、近づいていく。だけど言葉がわからないせいか、声はオレから逃げるように遠ざかって行ってしまう。ちょっと焦る。だって、そっちは……。
「そっちはダメだ! 雪で見えないけど、崖が……」
その時、チラッとレースの模様のひらひらしたものが目の端をかすめた。
――もしかして、女の子の服の飾りか何かかも!
とっさに手を伸ばして、そのひらひらをつかもうとジャンプした。
次の瞬間、ヒラヒラは手をすりぬけ……、
「うわあああああああ」
同時にオレは崖の下に落ちていた。地面にぶつかる、と体を固くしたけれど、予想した衝撃は、いつまでも襲ってこない。そのかわり、胃が喉にせり上がってくるような落下の感覚がいつまでも続き……、とうとうオレは気を失ってしまった。
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