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「なんだよ。出ていっていいって言ってやったのに、急に黙っちゃって。変な奴」 「(あるじ)、我が主」  ツンツン、と背中をつつかれた。振り返ると、コン・ティンが大真面目な顔をしている……つもりらしいが、実は笑いをこらえているせいで、ものすごく変な顔になっている。 『ブッホン』(どうやらブハッと吹き出すのを、咳払いでごまかしたらしい)『我が主。この者、ラーフの意識の欠片は、浄化された上、主の手の中に逃げ込んだ際、仏像の欠片というよりどころもなくし、ものすご〜く弱体化しているのでしょう。ですから……ククッ』 「あー、なるほどね! オレから出ていくと、コイツ、消滅しちゃうってことか!」 『……ウルサイ』  小さな声で、欠片が反論する。弱々しくて、オレの推測が正しいと言っているのも同然だ。 『我が主。この者、追い出してしまいましょう。浄化したとはいえ、邪悪の塊のようなラーフの意識の欠片なのですから』
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