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「ムオイは、1って意味だ。もうラーフの一部じゃない。お前はひとりでまるごとムオイだ」
『ムオイか。悪くないな』
『ムオーイ!』
クルンが、欠片の新しい名を宣言するように鳴いた。
「よろしくねっ、ムオイ!」
スレイが右手を差し出した。オレはスレイの手をキュッと握った。なんならそのまま握っていたかったのに……。
「ではウチも」とスレイを押しのけるようにしてコン・ティンが手を差し出した。コン・ティンと握手をしたかしないかのうちに、亮が手のひらを広げて肩のあたりにあげた。
「オレもオレも! よろしくなっ、ムオイ」
「おう!」と言って、亮の手を腕相撲するみたいにガシッと握ると、クルンに尻をつつかれた。
「クルン! お前のことも、忘れてないって」と慌てて言う。クルンに右手を差し出すと、クルンはお辞儀するように頭を三回下げた。
『魔物にとってラーフは、偉大な存在ですからね』とコン・ティンが説明した。
――あれ……。そういえばコン・ティンはムオイのいる右手と普通に握手してた。それに魔物なのに、アムリタは欲しくないのかな……?
頭の片隅にチラリと疑問がよぎったけれど、みんなと笑い合っていたら、そんなこと忘れてしまったんだ。
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