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「うう。あちい」 ――は? 暑い? 嘘だろ?  オレは無意識に発した自分の言葉に、心の中で突っこんだ。姫ばあちゃん家は北海道で、冬真っただ中だ。寒さで凍え死ぬことがあったとしても、不快な汗で全身びっしょりになって目覚めることなんてありえない。  しばらく目をつむったまま、ジッとしていた。 「夢かもしんない。うん。きっと、夢だと思う。寝ている夢。なんか、すっごく暑いのは、暖房ガンガンの場所だからだ、きっと」 ――だけど、なんか効きすぎの暖房とは暑さの種類が違う。むわっと、こう、空気自体が別物みたいな……。  オレは好奇心が抑えられなくなって、おそるおそる、ほそーく目を開けた。 「オッチャー!」 「おわああっ!」  まつげが触れそうなところに、女の子の顔があった。  きゃはっと笑って、女の子が離れていく。はにかんだ笑顔がすごく可愛い。真っ黒な瞳が大きくて、目はアーモンドみたいな形だ。褐色の肌。日本人じゃないんだ。年は多分オレより下だと思う。背はオレの肩の高さくらい。長い黒髪を三つ編みにふわっと結っている。 ――大事な事なので、くりかえします。すっごく、可愛い。……だけど、ここ、どこ?  まわりには鮮やかな緑色の葉っぱが茂った木々が生い茂り、隙間にのぞく空は見たことない程、奥の奥まで青い。  そして、木の根に囲まれた石造りの建物があった。壊れかけの古い建物だ。そろそろと立ち上がり、周りをぐるっと見回す。 「ここ、どこだよ……」
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