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 黒い瞳はアーモンドの形。髪はふわふわ。我が主、ケントにちょっぴり似てる。褐色の肌が精悍で弓をかついでた。  目と目が合った瞬間、うちは体に電気が走ったみたいに、動けなくなってしまった。ひとめぼれ、っていうやつかもね。なにをしていても、いつも感じている寂しさが一瞬で消えた。胸の中にランタンを入れたみたいに暖かくて気持ちいい。  うちは初めて、人間に『魅了』を使わずに話しかけた。イエスマンになった彼じゃなくて、そのままの彼の言葉が欲しかったから。  彼は「逃げた鹿を追いかけていたら、足をくじいて迷ってしまったんだ」と言った。うちは彼に食べ物と飲み物をあげた。歩き回っているうちに、怪我をした足に、薬草を巻いてあげた。うちと彼はすぐにお互いが好きになった。それで彼は足のケガが治っても村には帰らず、うちと暮らし始めたんだ。  だけど幸せな暮らしは長くは続かなかった。  彼は村長の息子だった。ついでに言うなら、結婚も決まってた。会ったこともない隣村の村長の娘と。長く抗争が続いていた村同士の政略結婚だと彼は言っていた。  ある日、村の男たちがやってきた。 fea5f2f7-53db-4dd4-a9d5-2702e85df27dイラスト:狼歩様
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