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『約束をやぶったら隣村と争いが起きてしまう。村に帰ってきて、隣村の村長の娘と結婚してくれ』と彼を説得した。  彼はうちを置いて、村に帰ってしまった。うちが会いに行ったら、門衛がうちの話も聞かずに切りかかってきたんだ。  うちは怒った。だから……、うん、まあ……、確かに「ほんのちょっと」やりすぎたかもしれない。  だけど、結婚式の宴の料理を、大風で吹き飛ばして台無しにするくらいは仕方ないよね? それに幸せそうに微笑む花嫁の髪を、風でぐちゃぐちゃにしたりするのは、ほとんど当然だと思う。あの娘、うちと同じ位の年だった……。  大好きな人を奪われたうちが、目についた村の男たちを、悔しまぎれに手当たり次第、魅了してかしずかせたって、彼を失った悲しさと比べたら、全然たいしたことないと思う!  だってうちは、彼を魅了したりはしなかった。彼の村を守りたいという気持ちまで踏みにじることはできなかったから。結局のところ、彼とあの娘は結婚し、ふたつの村に和平がもたらされたんだ。
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