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スレイの家で寝ていたら、薄い布のような何かが顔を撫でた。同時に空気が揺れる。
「ん……。なに……?」
重たい瞼をこすりこすり開けると、暗闇にたくさんの目が光っていた。
「うわっ!」
『ようやく起きたか』ムオイは満足そうに言った。『先ほどから起こしていたが、まったく起きぬから、数が増えてしまったのだ』
「増えたって、アレ?」
オレは天井を指さした。実物を見たのは初めてだけど、見た瞬間に分かった。天井からぶら下がっているのは、間違いなく、コウモリだ。
スレイの家は遺跡の一角にある。窓ガラスなんかはないから、隙間から入り込んだんだろう。首をすくめて、なるべくコウモリたちを刺激しないようにそうっと見回すと、部屋中にコウモリがいた。飛び回っているコウモリもいれば、天井にさかさまにぶら下がっているコウモリもいる。
「いったい何匹いるんだ?」
『知らぬ』
「はあ」ムオイに聞いても、らちが明かない。
「亮。おい、起きろって」
隣で寝ている亮に小声で呼びかける。でも全く起きる気配がない。自分もムオイに起こされても起きなかったことは棚に上げ、「のんきだな、起きろよ」と、オレは隣に寝ている亮の肩を揺さぶった。
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