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 怪我も特に見当たらず、オレはホッとした。 ナーガと同じで、コウモリは欠片が原因で狂っていたみたいだから、襲ってきたとはいえ、殺してしまっていたら後味が悪かっただろう。 それに無防備に眠っているコウモリは、ブタ鼻で愛嬌がある。 『アム……リタ……』  低い声が体の中から響いてきた。ムオイの声じゃない。嫌な感じだ。 「ムオイ? 何言ってんだ?」 「さっき、コウモリに刺さってた欠片、壊した。けど、よりどころをなくしたラーフの意志の切れ端が、ケントの中、入った」  スレイが心配そうな顔をする。 『我に従え』  体の中で、ムオイが言う。オレにではなく、コウモリの欠片に命じているんだ。 「浄化、行こ!」  オレの手をスレイが引っ張る。すぐにでも中央祠堂に向かって走り出しそうだったが、コン・ティンが呼び止めた。 『待て。ムオイがラーフの意志の欠片を呑み込めれば、スレイが狙われた理由がわかるかもしれない』 「でも、ケントが……」 スレイが眉をしかめる。コン・ティンはスレイには答えず、ムオイに話しかけた。 『ムオイ、呑めるか? 従わせるのではなく、呑み込め』 『やってみよう……むぅ』 「うわあっ! 熱っち」
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