10/12
前へ
/155ページ
次へ
 手のひらから肘のあたりまでが、まるで燃えているみたいに熱くなった。 手をぶんぶん振り回していると「ケントぉ……」とスレイの眉毛がへにゃりと下がる。 「だ、大丈夫だ! 心配すんな!」  オレはへの字になりそうになる唇を、無理やりニッと持ち上げ、親指を立ててみせた。 ――見た目は、なんでもないのに…… 「ケント、これ、冷やす!」  スレイが水に濡らした布で手を冷やしてくれる。実際に手が燃えているわけじゃないから、効果はないのだろうけど、スレイが一生懸命になってくれることが嬉しい。  手首をギュッと握って歯を食いしばっていると、唐突に熱さが消えた。耐えている時間は長く感じたが、実際は5分くらいのことだったみたいだ。手をまじまじと見つめる。もちろん火傷していないし、赤くなったりもしていない。  コン・ティンがオレの手を持って、『ムオイ。答えよ』と呼びかけた。 『んむ……』 『吞んだか?』 『(おう)』 『浄化するか?』 『無用だ』  コン・ティンがオレの手をキュッと握った。コン・ティンの手から緑の蔓が伸びてきて、オレの手に絡まる。コン・ティンは目を瞑って集中しているようだったが、やがてホッと息を吐いた。するすると蔓がコン・ティンに戻っていく。 『大丈夫なようですね。完全にムオイと一体化しています』 「あ、ありがとう、コン・ティン」  コン・ティンはオレににっこりと笑いかけたが、すぐに顔を引き締めてムオイの宿る手を見た。 『コン・ティンがムオイに尋ねる。なぜスレイが狙われたんだ?』 『デバターだ』 「デバター?!」
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加