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手のひらから肘のあたりまでが、まるで燃えているみたいに熱くなった。
手をぶんぶん振り回していると「ケントぉ……」とスレイの眉毛がへにゃりと下がる。
「だ、大丈夫だ! 心配すんな!」
オレはへの字になりそうになる唇を、無理やりニッと持ち上げ、親指を立ててみせた。
――見た目は、なんでもないのに……
「ケント、これ、冷やす!」
スレイが水に濡らした布で手を冷やしてくれる。実際に手が燃えているわけじゃないから、効果はないのだろうけど、スレイが一生懸命になってくれることが嬉しい。
手首をギュッと握って歯を食いしばっていると、唐突に熱さが消えた。耐えている時間は長く感じたが、実際は5分くらいのことだったみたいだ。手をまじまじと見つめる。もちろん火傷していないし、赤くなったりもしていない。
コン・ティンがオレの手を持って、『ムオイ。答えよ』と呼びかけた。
『んむ……』
『吞んだか?』
『応』
『浄化するか?』
『無用だ』
コン・ティンがオレの手をキュッと握った。コン・ティンの手から緑の蔓が伸びてきて、オレの手に絡まる。コン・ティンは目を瞑って集中しているようだったが、やがてホッと息を吐いた。するすると蔓がコン・ティンに戻っていく。
『大丈夫なようですね。完全にムオイと一体化しています』
「あ、ありがとう、コン・ティン」
コン・ティンはオレににっこりと笑いかけたが、すぐに顔を引き締めてムオイの宿る手を見た。
『コン・ティンがムオイに尋ねる。なぜスレイが狙われたんだ?』
『デバターだ』
「デバター?!」
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