1/20
前へ
/155ページ
次へ

アムリタを探すため、オレたちは密林のさらに奥に向かっていた。木々の葉が重なって薄暗い。道はなく、茂った下草がたえず足をこすってかゆい。 「スレイちゃん、アムリタのある場所、知らないんでしょ?」 「ん。聞いて、ない」 「こっちで合ってるのかなぁ」  亮はブツブツ言って首を傾げてる。  アムリタがある場所はわからないけど、スレイは遺跡で生まれ育ってる。大きすぎる庭みたいなものだ。オレたちは、スレイがアムリタを見たことがないっていうことは、逆に考えれば、スレイが行ったことがない場所にアムリタはあると推測したんだ。  だからオレ達は、スレイが「行っちゃ、ダメって言われてた」場所に向かって、かれこれ3時間以上、歩いている。時計がないから、3時間というのは、たぶん、ということだけど。  行き先が当てずっぽうだから、亮がだんだん不安になってくるのも無理はない。かといって他にあてもないので、オレ達はスレイの後についてひたすら歩く。  突然、ドンッと緑の苔におおわれた石が現れた。周囲はやや木々が開けていて、オレの身長くらいある大きな石がゴロゴロしている。そのどれもがつやつや輝く緑色の苔で覆われている。もう何年も誰も足を踏み入れたことがないんだ。 「登ってみるか」  オレは大きな石の一つに足をかけた。 「おわっ!」 「亮! どうした?」  後ろを振り返ると、亮がオレと同じように石によじ登ろうとして、足を滑らせたみたいだった。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加