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「分かってるって。クルンに偵察に行けとは言ってないよ。鳥目だから、暗いところは見えないもんな」とクルンの背中を撫でると、安心したのかおとなしくなった。
『コホン。我が主。うちも樹の魔物ですから、闇とは相性が悪いのです。いえっ! もちろん行かないとは言っておりませんよ。ですが、一番に入るのはちょっと』
「はいはい、コン・ティンも暗闇は怖いんだね」
『いえっ! 怖くはありません。怖くはありませんが、ただ樹は陽の光をあびてこその光合成ですからやはり光と水と土のない三重苦のような場所は本来の力を発揮できないといいますか……」
流れるような言い訳がえんえんと続く。コン・ティンは光合成はしないだろ、と突っ込みたいのをガマンして、「ハイハイ」とうなずいておく。亮をチラッと見ると、「オ、オレもムリだぉ」と顔を引きつらせる。そういえば、亮は昔からお化け屋敷とかすごく苦手なんだった。亮もダメだ。
「わたしが行くよ」とスレイが小さく手をあげた。
「いや、スレイはダメ。狙われてるんだから。わかった。オレが行くよ」
――オレだって怖いけどね?!
という胸の内は、心の奥に押し込めて言った。
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